SUGAO DENTAL CLINIC
用途
所在地
設計
施工
竣工
写真撮影
: 歯科医院
: 神奈川県川崎市
: ISHIKAWASAMBO
: 株式会社横浜建創
: 2023.03
: 山口伊生人
神奈川県の聖マリアンナ医科大学病院の静かな一角に佇む仮設の**Sugao Dental Clinic(すがお歯科クリニック)**は、「仮設」とは思えない洗練された空間です。視覚的な明快さと温もりあるマテリアルが調和し、一時的なスペースを丁寧に設計された医療環境へと昇華させています。
一時的な施設であるにもかかわらず、空間のすべてのデザイン要素には長期的な視点が反映されています。患者の快適さ、スタッフの動線効率、そして素材の責任ある選定が巧みにバランスされています。
設計の中心に据えられたのは、受付、事務、ラボ機能を集約した中央ハブ。この核となるゾーンは、リサイクルテキスタイルを用いたシートで包まれており、コントラストの効いた臨床的なパレットに柔らかく温かみのあるアクセントを加えています。同じトーンの色味はLouis PoulsenのPH 5ペンダントライトにも採用されており、スタッフのユニフォームと響き合うように空間全体に静かな一体感をもたらしています。
無機質で定型的な医療空間のセオリーに頼ることなく、この設計ではモジュール性と素材の正直さを大切にしています。治療室と出入口の間には、フルート加工を施したアクリルパネルを使用。これにより、ガラスのような重たさを避けつつ、適度なプライバシーと柔らかな光の拡散を実現しています。さらにこの仕切りには、既製品では見つからなかった接続部を自社スタジオ内で3Dプリントし、特注で制作しました。実用性と創造性を兼ね備えた対応です。
床材も、美しさと機能性の両面から選定されています。共用部には明るさと開放感を演出する白い床材を採用。一方で、治療室とラボにはグラファイトグレーの床を敷き、医療従事者の意見を反映した設計としています。これは、ツールの落下時に視認性を高めるという実用的な配慮から導き出された選択です。
構造としては仮設でありながら、Sugao Dental Clinicは「意図ある一時性」の実例といえるでしょう。モジュール化されたコスト効率の高い素材は、解体時に廃棄を最小限に抑えることを目的に選ばれました。とはいえ、実用性は美しさと切り離されることなく、細部にまで丁寧に織り込まれています。この空間は、たとえ一時的であっても思慮深く、柔軟性に富んだデザインが可能であることを証明しています。


















